2015年2月11日水曜日

最初の一羽

最初の一羽が勇気ある個体であるため、集団の中では非常に重要な役割を持つのは鳥さん好きには常識の範囲である。
彼の役割は重要で、彼が亡くなってからはしばらく、うちにはスズメが来なくなった。仮に彼の奥さんや仲間が来ても下には下りて来ず、電線でチュンチュン言ってるだけ。

ここ3日ほど真冬日に戻り、地面は雪で覆われ気温は氷点下が続いた。こうなると四の五の言ってられない。食べないと死ぬからだ。
そんな訳で彼の代わりとなる存在が集団から出てくる。誰かがこの役を担わなければならない。だからオラはそれを促してみた。すると我慢しきれずに地面に降りて来た。他のスズメも彼に続く。3羽・・・5羽・・・10羽・・・どんどん降りてくる。

一度でもそれを経験すれば彼らは慣れるのが早い。あとはこちらが警戒心を与えなければ良いだけ。これはオラの役目。終始、手や腕以外を動かさなければ良いのだ。あとは視線と表情。エサを投げる位置による。これも経験値は十分にあるので何も問題ない。

新しい「最初の一羽」 の彼は腰が引けているものの、腹いっぱいになるまでオラのすぐ近くで食べていた。食べている間はずっとオラの顔を見ている。これは顔を見て相手が何を考えているか推測すると同時に、特徴を掴んでいるのだ。
顔さえ覚えれば、間違いを冒す危険は減る。声を掛ければ助けてくれるということだ。

オラと鳥さんの関係は、馬鹿なハトと普通の人とは違う関係だ。

鳥さんの自由を奪わない上で仲良くなるということ。鳥は援助を受けられ、オラは鳥さんのコミュニケーション方法を学ぶという相互に利益がある関係。同時に彼ら鳥さんに、人間との付き合い方を勉強してもらう。
犬や猫は接し方次第ですぐに触れさせて貰える。でも、これでは面白みがない。オラが人間をそうそう簡単に信用しない相手を選んでいるのは理由がある。

仮に人間が未知の存在に遭遇したとき、それとコミュニケーションを取るとしたらまず最初に「相手が何を思っているか」ということがとても重要になる。それを正しく判断して、適切な行動を取ることは難しい。それが無表情である場合は特に。
でも、行動の一つ一つにはそれが表れる。生物である以上。または意思を持つ相手である以上、それは表に出る。

つまり、オラは「最初の一羽」になりたいのだ。

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