実家の前には家を取り壊した後に大きな空き地ができ、草ボーボーな場所がある。そこにハシブトガラスほどの大きさのタカが着地していた。
ネズミでも探しているのか?という視線で見つめたところ、急に飛び上がって斜め向かいの家の屋根に飛び移ろうとしたとき・・・ジュージュージュー!というスズメの悲壮な鳴き声が・・・え?
タカの足にはスズメ(成鳥)、同時に飛び上がったもう一羽の薄い色の子スズメ。屋根の上で鷲掴みにされたスズメ(親)、すぐ前の電線には親を気遣う子スズメ・・・えええええええええ!!!!
ああ、終わったな・・・・タカは泣き叫ぶ親スズメの喉元にガブリ!。それで静かになった。 どうして良いか分からず、何が起こっているのか分からない子スズメ。心配そうに親に話しかけるも既に絶命している親スズメ。
手出しできないオラはただ顛末を目に焼き付けるだけ。タカが西の空に飛び立つと同時に子スズメがタカの脚に握られた親を追う・・・やめろ!負うな!オマエも食われるぞ!・・・そう思った瞬間、子スズメはタカを追い越し右急旋回してどこかへ。タカはそのまま真っ直ぐ飛び去った。
時間にして30秒かそこらの出来事だっただろう。
こんな事もあるさ。オラにとってはとても馴染み深く相性が良く簡単な会話ができるほどの仲であるから当然、気持ちとしてはスズメの味方。でも、スズメは捕食される側の生物。
スズメが虫を捕食しているように。スズメもより大きな捕食者に食われることはあるし、それは自然なこと。どこか納得いかないという気持ちはあるけど、食物連鎖の一部を垣間見ただけ。
彼らにとってオラという存在は特異であり、ただ、エサを無償で提供してくれる変な生物でしかない。あくまでも傍観者なのだ。関わりを持つと感情移入してしまうのは人間では当たり前のことだから特別に見えてしまう。
今回は捕まった瞬間をオラは見ていない。子育てシーズンでもあるし親はエサとなる小さな蛾でも追いかけていたのだろう。そこへ電線の上からスズメを狙っていたタカが居て、親スズメは不覚にも蛾に夢中になって気付かなかったのだろう。
他のスズメの行動を観察したので恐らくそうであろう。スズメは英語でスパロー。 ミサイルの名前に使われるほどの高軌道な飛び方ができる反面、獲物しか目に入らず車に突っ込んで轢かれたり何かに激突してしまうことがある。
今回もたぶん、うっかりなのだろう。でも、自然界では「うっかり」が命取りになることがある。それはオラも散々近所の公園で見てきた。 人間だって「うっかり」で簡単に死んでしまう。今回の目撃は親スズメがエサしか見ておらずに真上から急降下したタカに気付かなかったのだろう。
過去の行動観察からスズメは獲物を捕まえた瞬間どこかに着地して数秒ほど動きが止まる。タカはそれを電線の上から見ていて「どうやったらあの獲物を確実に捕まえられるか・・・」ということしか考えており、その隙を狙ったのだと思う。スズメもこの辺では見ない大きな鳥がまさか捕食者とは思わなかったと思う。オラだってこの辺に猛禽類が来るとは思わなかった。スズメがタカを知らなくても不思議ではない。
親スズメは残念であったが、あれだけしっかり飛べる子スズメなら独り立ち寸前とオラは見ている。一つの命が終わった。でも、その命は子孫を残すことができたのだ。残念な結果になったと思うのはオラがとてもスズメ贔屓(ひいき)であるから。でも、タカの視点から見れば親を待つ子に食べさせるエサを捕ったに過ぎない。
オラの心の声が聞こえたとは思わないが、子スズメは正しい判断ができたのだろう。明日には死んでしまうかも知れないが、子スズメにはこれから親の分も生きて次代へと命を継いで欲しいと願う。
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