スズメでも最後を看取って欲しいと思うのだろうか?
今朝、車の暖気(凍りついた車を暖めるためのアイドリング)をしようと玄関を一歩出ると、降り積もった雪の上に茶色いテニスボールぐらいの物体が1つ・・・よく見ると、雪の上に「ぽふっ」っと放り投げた毛玉のようなものがコッチをキョロキョロしながら見ている。
Σ( ̄(Д) ̄;) え?どうしたの? ・・・と、オラはそれに問いかける。
キョロキョロするだけで何も言わないそれは嘴の先に一度溶けて凍った雪が着いていて動けない様子。オラはそっとそれを拾い上げて部屋に戻り、キッチンペーパーを重ねて布団を作り、水道の凍結防止程度に低温度設定にしたオイルヒーターへと乗せて、暖める。
拾い上げたときも無言なこいつ。もうダメだと思っていたのだろう。足先にも一度溶けて凍った雪が着いており、良くて回復するかどうか。悪くて凍傷により足はもうダメな感じになっていた。
5分ほどで足先も動かせるようになったが、いつもオラの前では動きがスローだ。モソモソとしながら顔は天井に向けたまま息が荒いものの眠そうな顔で薄目を開けている。水を飲ませようと指先に水滴をつけて口元にやるも飲む気配は無い。小さな嘴の先に水滴をつけると、「いや!」って感じでブル!っと払い除けられる。3度やってもダメ。こいつの好きなバームクーヘンも食わない。もう、色々とダメなのだろう。せめて暖かくして寝てくれ・・・
帰ってきたらもう死んでるだろうと思い、小鳥用の藁を編んだ籠(こも)に寝床を作り、頭だけ出るようにキッチンペーパーの掛け布団で覆う。オイルヒーターはOFFにして、余熱で保温できるようにした。暑すぎて死ぬことは無いし、外に比べたら布団で保温も出来るから最後まで寒い思いはしないだろう・・・
仮に元気になった場合、帰ってきたら部屋のどこかにかくれんぼされても困るゆえ、籠には専用の蓋があったのでそれを載せる。 真ん中に網で空気穴がある。これで窒息もしない。
この籠は、大昔にホームセンターで在庫処分セールしていたのを2つ買っておいたのだ。丁度、鳥と会話が出来るようになったころ色々と鳥から話しかけられるようになり、同時に助けを求められることもしばしばあったからだ。
オラは車の暖気を10分ほど前に行なう。で、そろそろ出勤しなきゃならないのだが、こいつが心配でならない。でも、「玄関先で顔見知りのスズメが行き倒れていて、助けを求められたので今日は介抱するために休みます(遅刻します)」なーんて言える訳がない。実際に、鳥と会話できることを知っている人も居るのだが、唯でさえ会社では変な人なのに、そんな理由で休む(遅刻する)訳にもいかない。
こいつはさっきから凄く眠そうでもあり、息が速くて苦しそうでもあり・・・色々と声を掛けるが、こいつはいつもマイペースで先日の日曜もパンの前で固まって「これ美味しくないから要らない」っていう態度。仕方が無いのでバームクーヘンを千切って渡すと、「何で最初から出さないんだよ」とかいう態度で、モソモソとした動きで食べていた。
いつもどおりだと思っていたのだ。だけど、こいつの態度からするとかなり高齢なのかもしれない。前にもこいつのような態度を取るスズメが居た。彼も高齢だった。態度が明らかに人間臭い。というか、人間に分かるような態度を取る。
見守る時間も、これ以上の事もオラにはできない。せめて猫に噛まれる激痛に苦しんで死んだり、この極寒の雪の上で徐々に凍って死ぬよりはマシだろう。
以前、仲が良かったそのスズメも、死ぬ間際は夏でも寒そうにブルブルと震えていたのだ。安心して眠れないので、わざわざオラのすぐ傍まで来て、「おい、おれ、今から寝るから見張ってろよな」って態度で。
だから、最後の最後は、何からの攻撃も受けない安全な場所で、暖かくして眠れよな・・・
心残りはあるが、一応、「行って来ます。さようなら・・・」と声をかけて家を出た。
今日は同じ課の人がこぞって現場に出かける用事があり、しかも突発の仕事がまた増えた・・・更にプリンターの入れ替えでセッティングやら、PDFに文字入力したいとか10台近いPCのインストールと設定をしたりアドバイスしたり、色々と忙しかった。
昼に心配になったので一度家に戻る。
もしも元気になっていたら放すつもりで・・・でも、もう動かなくなっていた。
まるで眠るように。
色々と楽しかった。お前は数少ない会話が出来るスズメだったよ。 んじゃ、さようなら。