夏の夜も更けて
月と人工の光で白んだ夜空で、微かに光る星と星との間を見つめると、新たに星が光りだす。何も見えないところにも次々と星が見えはじめ、夏の終わりの星座 たちが、我も我もと名乗りを上げた。真上を見上げることを忘れていたオラの脳裏に、子供の頃に買った望遠鏡が浮かび上がる。
部屋で聴こえる機械音。換気扇と冷蔵庫とパソコン。まるで暖房のような熱気から逃れて夜空を眺める。時折頭を掠める黒いヤツ。洞窟なんて無かろうに。必死 に生きてるんだなコウモリよ。子供の頃、当たり前のように見かけた生き物たちも、気づけば記憶の奥底に。これからどれだけのものが記憶になって行くのだろ うか・・・
機械熱と小虫に纏わりつかれ、出たり入ったり忙しい。湿気が雲に変化してカブト、クワガタ、万歳してる子供。見送る先で雲は消え、元の湿気に返ってく。朱 色に染まった街の夜空と、青く明るい月と空。そして間に闇と星。視覚と聴覚がごっちゃになって、静寂なのに騒々しい。
宇宙線と太陽風。地球を取り巻く大気と磁場。ぶつかってできる命の壁。悪戯好きの壁さんは、電波を曲げて地上に戻す。遠くの故郷(くに)の放送が皆の頭上 に降り注ぐ。夜を待ちわびたリスナーは、壁さんの悪戯に感謝して、今か今かと待っている。自分のハガキを読まれるのを待っている。
虫の声が涼しげで外に出ては夜風に当たる。月もすっかり黄色くなって、ススキが似合う様になる。時折聴こえるロケット花火。煩いながらも夏の音。近くで鳴 いてる虫の声。オラの放屁で鳴くのを止めた。ロケット花火はムシなのに・・・